2012年1月15日日曜日

F1とサラリーマン

浜島 裕英
(画像は浜島氏のtwitterから拝借)

ブリヂストンの浜島裕英氏がスクーデリア・フェラーリに移籍する。
(「スクーデリア」にするか「スクデリーア」にするか迷いましたが日本で一般的な「スクーデリア」の発音に統一します)
浜島氏の細かな経歴はあえて述べないが、誤解を恐れず彼にキャッチコピーをつけるとすれば「世界一となったニッポンのサラリーマン」がふさわしいのではないだろうか。

もし、ブリヂストンがF1で一勝もできなかったとしても、浜島氏のクビが飛ぶ、ということはなかったのではないかと思う。
その代わり——これは本人やブリヂストンのスタッフから聞いたわけでも、まして給与明細を見たわけではないから断言はできないけれど——、勝利を挙げたり、チャンピオンを獲ったところで、所定の給与・手当以上の見返りはなかったとも思う。
それが端的に感じられたのが、何年か前の日本GP前にフジテレビで放送された、浜島氏への密着取材だ。
そのワンシーンで浜島氏がブリヂストン本社に出社するところがあるのだが、ごく普通に山手線に乗って出社している。
すでにブリヂストンはマクラーレン、フェラーリでチャンピオンサプライヤーとなっているときだったと思う。
浜島氏の知名度もヨーロッパでは相当なものになっていた。
にも関わらず、日本の中ではごく普通にサラリーマンをしているところがおかしく感じられたことを記憶している。

そういえばホンダのF1参戦第二期のときに、ホンダスタッフとエンジン供給先のスタッフ(ヨーロッパ人)との 間で、こんなやり取りがあったらしい。
ヨーロッパ人「お前達はポイントを獲ってもボーナスが出ないというのは本当か?」
ホンダスタッフ「本当さ」
ヨーロッパ人「ならば、なぜそんなに努力するのか?」
ホンダスタッフ「ああ、それが僕達日本人と、君達との考え方の違いかもしれないね。決して、僕だけが特別というわけじゃない」

F1コンストラクター(製造者)のスタッフは皆、個人事業主だ。
ドライバーもエンジニアもメカニックも、もしかしたらファクトリーにいる掃除のおばちゃんも、オーナーとの間で年単位の契約を結んでいる。
(実際、「ヨーロッパ化」されたホンダ第三期チームは、モチベーション向上のために、ある時期から掃除夫にもポイントゲット時のボーナス支給を行なっていた)
だから、好成績で見返りを受けられる一方、チームが不調となれば即座にクビを切られることだって当然の世界なのである。

正直言って、浜島氏のスクーデリア・フェラーリ移籍のニュースを聞いたとき、あまり嬉しくない感情もあった。
またホンダの話になってしまうけれど、F1参戦によってホンダの優秀な技術者が多数引き抜かれてしまうということがあったからだ。
ブリヂストンも同じ状況になるのでは、という危惧があったし、今のブリヂストンはF1に参戦していないけれど、将来、復帰するときにはまた浜島氏の指揮の下、強いブリヂストンを見たいと思っていた。

しかし、浜島氏は間もなく定年の60歳。
定年からの新たなチャレンジ、ということであれば、今まで以上にハミー(浜島氏のヨーロッパでの愛称)を応援したくもなる。

それに……私はティフォッシだからね!

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